ABOUT MUSEUMミュージアムについて

ご挨拶

このたび、私が長年にわたり集めてまいりました美術品やアンティーク品を展示する「黒栁徹子ミュージアム」を、長野県軽井沢で7月にオープンさせていただくことになりました。

幼いころからの両親の影響や、また、テレビや舞台を通じて経験を重ねるなかで、国内外のアートや工芸品に心惹かれ、気がつくと、多種多様で膨大な数の品々が私の手元に集まっていました。そのひとつひとつに大切な思い出があり、目にするだけで当時の喜びや感動が思い起こされてきます。多くの方々とその魅力を一緒に分かち合える場ができたことに、大きな喜びと感謝を感じています。

軽井沢の自然の中で、訪れる皆さまの心が安らぎ、時には、クスッと微笑みながら過ごしていただける空間になれば幸いです。
これまで出会ってきた多くの方々、そして応援してくださる皆さまに、心より感謝し、厚く御礼申し上げます。

黒栁徹子

代表あいさつ|黒栁徹子

コンセプト

ミュージアムについて

館内では、長い時間をかけて黒栁徹子のもとに集まってきた美術品やアンティークの数々を展示しています。そのひとつひとつの作品から、黒栁が歩んできた道のりや、彼女の愛に満ちた思いに触れていただければと思っております。また、教育プログラムやワークショップ、トークイベントなどを通じて、黒栁徹子のこれまでの功績や社会貢献活動、さらには芸術や文化の魅力を、多角的に体験していただける場を提供してまいります。子どもたちから大人まで、世代を問わず多くの方が学び、楽しみ、感動を共有できる空間を目指し、さまざまな企画を展開していきます。このミュージアムが、皆様に芸術や文化の素晴らしさを体感していただけるきっかけとなれば、私たちにとってこれ以上の喜びはありません。

展示品について

このミュージアムでは、黒栁徹子の感性と人生を映す「黒栁徹子コレクション」を展示しています。ガラスのペーパーウエイト、華やかな着物、版画や油絵、犬筥、中国の宮廷服、世界各地から集められた陶磁器、バッグや小物、さまざまな場面で着用したドレスや衣装、彼女の足跡を表すような貴重な資料など、多彩な品々が並びます。
黒栁徹子がこれまでの人生で出会ってきた、たくさんの「素敵なモノたち」。それは単なる美術品ではなく、彼女の歩みと深く結びついた、大切な宝物です。恩人や友人から贈られた品々、旅先で出会った心惹かれる逸品など、それぞれに忘れがたい思い出が詰まっています。
訪れる皆さまには、展示を通じて黒栁徹子が出会った世界や人々の温もりやワクワクドキドキを感じていただければと思っております。

建築について

建物、空間について

設計は、黒栁徹子が理事を務めるちひろ美術館(安曇野、東京)の設計でお世話になり、鳥羽市立海の博物館、牧野富太郎記念館、京都や赤坂などのとらや、渋谷駅周辺の再開発など、数々の著名な建築を手掛けられた内藤廣氏にお願いしました。
高度な木造建築の技法が駆使され、軽井沢という土地の特性を生かした気持ちのいい空間となっています。
黒栁のイメージが存分に盛り込まれたミュージアムに作り上げていただきました。

建築家 内藤廣氏からのメッセージ

安曇野ちひろ美術館の設計を通して黒柳さんと面識を得たのは、もう三十年前のことになります。以来、近しくお付き合いいただいています。
お目にかかるたびに思うのは、すごい、ということです。その旺盛な活動の幅と知識の広さ、そしてそれを背景にした思考の展開にはいつも驚かされます。お人柄はそのままなのですが、テレビで拝見する黒柳さんとは一味違うとんでもなく広い世界を見せていただいていると思っています。でも、おそらくそれもごく一部なのかもしれませんけれど。
その尊敬する黒柳さんからご自身の美術館の設計の依頼をされたことには、また驚かされました。予想もしなかったサプライズでしたが、これ以上の誉れはありません。しかし一方でこわくもありました。黒柳さんの美術館ですから、ご自身のイメージとシンクロするようなものでなければなりません。これは建築家にとっては最大級の難題です。まず初めに考えたのは、大工さんが作るような在来工法の木造技術で造るということです。大工さんが使っているこの工法は、江戸時代の初期に作り上げられたもので、やがて広く庶民の暮らしを支えるようになりました。かつて日本中どこでも、家を建てるとなれば棟上げ式をやったものでした。真っ青な空を背景に組み上げられた木材の骨組みは、ため息が出るほど美しいものです。
これは紛れもなく庶民の技術であり庶民の暮らしに息づいていた文化です。それを建物の基本にすることは、テレビを通して庶民の暮らしとともにあろうとする黒柳さんのお考えにも通じるのではないか、と考えました。これは私の勝手な思い入れです。
でも、それだけでは足りません。やはり美術館は特別な場所です。日常の暮らしとは違う空間を創らねばなりません。そこで、黒柳さんがヒラリと身をかわして舞うような動きを建物全体に与えたらどうだろう。たぶんそれは、これまで誰も見たことのないような姿の建物になるはずです。
どのような変化のある形にしても、多少複雑な形にしても、腕のいい大工さんなら難なく作ってくれることを知っています。われわれの想像以上に大工さんの技術はすごいのです。図面にするのはたいへんですが、実際に作るのは考えているよりハードルが低い。大工さんの技術があるからです。そして、誰もやったことがないもの、と言うと現場の監督や大工さんは俄然やる気を出します。そんな風土がまだ残っている。それがこの国の建設の良いところです。
舞うように屋根が折り重なる。でもそれだけでは何かが足りません。それで黒柳さんに、物干し台みたいな場所を屋上につくりませんか、と相談しました。ほらほら、昔はどの家にもあったでしょう、屋根の上に乗っかっている物干し台、あそこは眺めがいいし、気分が晴れる逃げ場所でしたよねー、ああいう場所を作りましょう、と話しました。もちろん、快諾してくれました。
屋上の物干し台、ではなくて物見台、実は、天気が良ければここからの浅間山への眺望は絶品なのです。また、この物見台に上っていく階段には、この建物の複雑な柱や梁の間を潜っていくような面白さがあります。たくさんの方に、その面白さを感じていただけたらと思っています。
なにはともあれ、黒柳さんに気に入っていただければ、そして黒柳さんを愛する多くの方達に楽しんでいただければ、一人の建築家としてこれ以上の幸せはありません。


建築家 内藤廣

施設概要

所在地
長野県北佐久郡軽井沢町長倉574
敷地面積
2,531.27㎡
規模及び構造
木造2階建 一部 鉄骨造
延床面積
651.67㎡ (1階:620.00㎡ 2階:31.67㎡)
主要室面積
1階部分 240.38㎡
2階部分 18.42㎡
(ホール展示場、1階展示場、休憩所ショップ)